本の返本率の話【『ぶっくぶっくに溺れて』より再掲】

※本投稿は、以前のブログである『ぶっくぶっくに溺れて』から再掲しているものです。

<オリジナル投稿 2019-04-19 20:15:56 >

出版業をスタートし、毎日地べたを這うように少しずつ前に進もうとしているところなのだけど、出版社にとって大変に痛いことのひとつ、「返本率が高い」という事実とどう向き合っていくべきか、考えることが増えています。

返本率というのは、出版社が取次業者を通して書店に販売した本について、書店が取次業者を通して出版社に「返品」する確率、のこと。一般的な製造販売業等における「返品」は、不良品であったり、クーリングオフであったり、といったことが主だと思うのだけど、本の業界では、「売れなかったから」という理由で自由に返品することができる。かなり乱暴に説明をしているので、詳しく知りたい方は調べていただくといいと思いますが、とにかく、本の業界は一般的な製造販売業等とは違う独特の市場を形成しているのだけど、この返本制度という制度は、「再販制度」と並ぶ、かなり特異な制度だと思います。

返本制度があるからこそ、様々な本が書店の店頭に並びやすいというメリットがもちろんあって、この制度が日本の本の業界の発展や、日本人の知的レベルの向上に大きな役割を果たしたことは間違いありません。その反面、出版社の立場からすると、本が売れたからと単純に大喜びするわけにはいかず、常に、いつどれだけの返本があるか、びくびくしながら過ごすことになります。

そして、昨今の返本率の平均値は、ざっくり言って40%と言われています。10冊売れても、4冊はいずれ返品されてしまう計算です。

単純に、売れたと思っていたものが返品されるということ自体が痛いのはもちろんですが、おそろしいのは、4割返品されることがわかっていても、一旦は印刷して販売しないと、そもそも全然売れない、というところにあります。そして、日本の本の業界は売上げの回収サイトが非常に(他業種の方が見たら驚きます!)長い。つまり、いずれ返品されてくることがわかっていても印刷・製本費をかけなければならず、しかも順調に本が売れたとしても売上金が手許に入ってくるまでには時間がかかる。加えて売上げが立ってしまうから、税金を納めなければならなくなる可能性も上がります。

そう、簡単に言えば、出版社は、特にスタート時期は、とてもとてもとてもたくさんのお金が必要になるのです。

前述のこと以外にも、編集に当たるスタッフもごはんを食べなければならないし、仮にSOHOであったとしても最低限の経費は必要ですから、実際に必要なお金はかなりの額になります。

こういったことは事業を始める前からわかっていたことではありますが、実際に生々しい数字と対面してみると、やはり脂汗が出る思いです。めちゃくちゃリアルにゴジラを想像していた人でも、実物のゴジラが太平洋あたりから現れたのを見たら悲鳴をあげるでしょう。いや、今さら何を言ってるんだ感があるのはわかっているのですが、それでも言わずにはいられないのです!

まぁ何を言ったところで、私の気持ちひとつですぐに業界の仕組みを変えることなどできるわけがないわけで、現実を向き合って、クリアしていくしかないのですけれどね。

ただ、やはり時代は変わり続けているわけで、新たな仕組みも登場してくることは間違いないと思っています。既にいくつか出てきているものよりももっと根本的に革新的な仕組みが、きっと出てくるでしょう。世の中はそういうもんですから。

そして私も、そういった流れの端くれだけでも担えるよう、精進していかなければいけません。

この記事を書いた人
鈴木 征浩

本とゲームと日本女子ソフトボールリーグとぬいぐるみが好きです。
株式会社opsol book 代表取締役。
出版プロデュースや編集業をやっています。
福祉医療系のお仕事も。

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